2016/01/06

おにく



諸君 私は肉が好きだ
諸君 私は肉が大好きだ

カルビが好きだ
ロースが好きだ
ハラミが好きだ
タンが好きだ
ギャラモトが好きだ
レバーが好きだ
豚トロが好きだ
ナンコツが好きだ
ウインナーだって好きだ

家庭で お店で
平原で 街道で
塹壕で 草原で
凍土で 砂漠で
海上で 空中で
泥中で 湿原で

この地上で行われるありとあらゆる焼肉が大好きだ

煙が立ち込めて店のすべてが見渡せないようなくさい焼肉屋が好きだ
空中高く舞い上がった脂と煙の臭いがこびりついた客とすれ違う時など心がおどる

カルビをならべた皿が一斉に轟音と共に机に並べられるのが好きだ
箸を持っていまかいまかと肉を凝視すると胸がおどる気持ちだった

悲鳴を上げて燃えさかるカルビが油を滴らせてくる時に裏返すのが好きだ
俺様の操るトングの鋭いツメが分厚い肉に突き刺さるのには感動すら覚える

隣席の細いオネーサンが力いっぱい肉に齧りつくところを何度も何度もちら見している様などはもうたまらない
泣き叫ぶ菜食主義の不健康さを眺めながら肉を焼いて、この肉が焼ける匂いにばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ

哀れな抵抗者達が雑多な穀物で健気にも立ち上がってきたのを、白いご飯とキムチごと焼肉をほうばった時など絶頂すら覚える

アルミ焼きの物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ
野菜魚に追いまわされ害虫の様に網の隅に追いやられるのは屈辱の極みだ

諸君 私は肉を 地獄の様な肉を望んでいる
諸君 私に付き従う大隊肉友諸君
君達は一体何を望んでいる?

更なる肉追加を望むか?
情け容赦のない糞の様なサラダバーを望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な肉を望むか?


『肉! 肉! 肉!』


よろしい ならば肉追加だ


我々は渾身の力をこめて今まさに振りあげんとする握り拳だ「注文お願いしまーす」
だがこの暗い煙の底で数時間もの間堪え続けてきた我々にただの焼肉ではもはや足りない!!

大焼肉を!!
一心不乱の大焼肉を!!

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